白樺便り

長野市富竹で開業している行政書士のブログです。日々の出来事、気になったことなどを書き記しています。
夫婦別姓考<後半>
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    【議論への意見】

       まず、前提として現に諸外国で別姓を採っている国があることは事実です。夫婦で別姓を名乗る権利が日本国憲法で保障されているかどうかは、判決を求めるため立法不作為とそれによる損害賠償を請求するための方便にすぎず、あくまで別氏か同氏かは立法論の問題にすぎません。
       そのうえで、よく聞かれる反対論として、日本の伝統的価値観や社会の崩壊を持ち出すのは見当違いです。とくに、基本的人権の尊重、民主主義、平和主義をとる日本国憲法下において、これに反する価値観を伝統という印籠によって正当化することは誤った考えです。また、社会が崩壊するといっても、同氏であることは家族の絆を強める一つの材料にしかすぎず、同じ姓だからといって家族になるわけではありません。子どもの苗字をどちらにしたらいいのか、姓が違うと夫婦を呼ぶ時に困る、などという話もありますが、子どもの氏の話は夫婦別姓が認められた後に詰めればよい話ですし、夫婦の姓など親しい間柄であればそのうち覚えられるでしょう。

       賛成派は、あくまで「選択的」として、同氏を希望する家族は同氏にすればよいし、別氏を希望する家族は別氏にすればよいと主張します。これはまさしく自己決定権に違いならないと思います。

       結局、反対派は価値観が多様化するのを恐れ、同性婚などに波及するのを恐れているのだと考えられます。あれもこれも認めると歯止めがきかなくなってしまうと。もちろん、生まれてきた時から当たり前だったことが変わることへの抵抗は理解できます。しかし、敗戦後の日本で家制度・男尊女卑・現人神である天皇がなくなったときの混乱に比べると大したものではないのではないでしょうか。
       やはり賛成派としては反対派の感情を和らげ理解を得るべく地道に根気強く活動を続けるしかないのでしょうね。といっても、
    1996年から国会で審議入りされていますが…。この議論が日本の寛容な土壌、少子化対策、発展的な社会形成へと繋がることを祈っています。
       実は、このように書いている私自身、大学入学前までは結婚により女性が名字を変えることが当たり前と信じて疑いませんでした。実際
    97%が結婚により女性が名字を変えているらしいです。結婚して子どもを持つのが当たり前って思ってましたしね。まさかこんなに未婚、非婚、あえて子どもを持たない家庭が普通になるとは思ってもみませんでした。当たり前って怖いですね。日本丸の一員としては、日本丸と日本文化の継承のため、子どもが増える社会となり持続可能な発展を維持してほしいと切に願っています。
    判例 | 17:09 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
    夫婦別姓考<前半>
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         東京地裁で「夫婦別姓の権利は憲法上保障されているとはいえない」として原告の請求を棄却した判決が出たようです。
      【参考】
      http://jp.wsj.com/article/JJ12221447266347933683619174153071196336156.html

         判決文は明日の新聞をゆっくり眺めるとして、一考を記します。

      【「憲法上保障されている」とは】

         憲法上認められた権利には、憲法に明記されている人権(学問の自由など)と明記されていない人権があります。
         憲法に明記されている人権というのは、1946年の憲法制定時に概念として考えられていた人権のうち、国家権力によって侵害されがちな歴史をもつゆえ、特に憲法で保護すべきと考えられたごく一部の重要な権利です。
         当然、時代の経過により社会が発展し経済活動が高度化すると、さまざまな権利が考えられて保護する必要性が生じてきます。

         そこで、解釈上、憲法
      13条の幸福追求権と呼ばれる条項を根拠に「新しい人権」が憲法上保護される人権として認められてきています。
         もちろん、なんでもかんでも「新しい人権」として認めるわけにはいきません。どんどん認めていってしまうことを「人権のインフレ化」なんていいますが、人権の価値が希薄になってしまいありがたみがなくなります。
         
      そこで、仝朕佑凌由陛生存に不可欠であるか(人格的不可欠性)、⊆匆颪伝統的に個人の自律的決定に委ねられたものと考えているか(歴史的正当性)、B真瑤旅駝韻行おうと思えば行えるか(普遍性)、す圓辰討眤梢佑隆靄楔△鮨害するおそれがないか(公共性)、などを総合考慮して決定することとされています。 

      【夫婦別姓の権利が憲法上保障されているか】

         この訴訟における権利は、記事によると「夫婦がそれぞれ婚姻前の姓を名乗る権利」とされています。「姓名保持権」といったところでしょうか。

         それでは、上の基準に照らしていきます。

        /佑禄仞源に姓名が決まり、他者からその姓名で呼ばれ自分を識別します。姓名なしに番号などで呼ばれることは人格を無視したといえるでしょう。そうすると、人格的不可欠性は満たしそうです。

      ◆ 々掌融代までは一部の者にしか姓はありませんでした。その中でいえば、氏姓制度以降「姓」は血族集団を表すものとして機能しており、社会が個人に委ねたものとまでいうのは難しそうです。ただし、女性には適用がなかったため、男女平等が前提の現代ではこの時代は参考になりません。

         明治時代に戸籍制度の導入によって姓のない者はいなくなりました。ここでは、徴兵制の礎として家制度が設けられ、戸籍はその役割を担っていました。徴兵逃れなどの養子縁組などが行われましたが「家」を表すものとして機能しており、ここでも社会が個人に委ねたものとまでいうのは難しそうです。ただし、やはりここでも男女平等がないため、参考にできません。

         敗戦後現行憲法になり、個人の基本的人権の尊重が謳われて家制度が廃止されると、いよいよ社会が個人に委ねたといえる余地は出てきます。しかし、ここ70年ほどを伝統といえるのか、姓の変更が縁組や結婚程度でしか変わらないのが一般的であることからすると、社会が個人に委ねたというのはやはり難しそうです。

        多数の国民が行おうと思えばできるし、ぢ梢佑隆靄楔△鮨す心配はありません。

         結局、△領鮖謀正当性が他の要件との兼ね合いでどこまで考慮にいれるべきかで結論が変わってくることになります。

      【本判決の意義】

         「夫婦同氏」を定めた民法の規定の合憲性が問題になるときに、いままで司法は「同氏」とすることに合理性があるとしてきています。つまり、立法論の問題として司法が国会の裁量にまで踏み込まないというスタンスをとっています。今回の判決はおそらくそのスタンスを超え、「別姓を名乗る権利が憲法上保障されているとはいえない」と踏み込んだことに意義があると思います。ただし、あくまで立法論として政府が選択的夫婦別姓制度を採ることを妨げるものではありません。民法を改正して選択的夫婦別姓制度にすることは本判決とは関係なしに可能です。

      判例 | 16:57 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
      割増賃金に関する新判例(平成24年03月08日最高裁判所第一小法廷)
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        本件は、派遣労働者が派遣会社を相手取って損害賠償と時間外手当の支払いを求めたものです。

        問題となった雇用契約の内容は、
        「1 基本給は月額41万円。
         2 月間総労働時間が180時間を超えた場合、時間当たり2560円を支払う。
         3 月間総労働時間が140時間に満たない場合、時間当たり2920円を控除する。」
        といったものです。

        労働基準法では、週の法定労働時間を40時間と定め(32条)、労働時間を延長した場合(33条、36条)、時間外手当を支払うこと(37条)が定められています。

        そこで、法定労働時間を超える部分について基本給に含める旨の契約の合理性が問題となりました。

        原審である東京高裁は、私的自治を重視した判断を示しました。
        最高裁の示した原審の判断要旨によれば、
        「労働者は給与が高額だから、幅のある給与条件のもとで勤務時間を調節することを選択したといえる。
        月間総労働時間が160時間を超え180時間に満たない部分の時間外手当が給与に含まれているといえる。
        160時間を超え180時間に満たない時間外手当について労働者が請求権を放棄したとみることができる。
        以上のことから、本件契約は合理性がある。」と判断しました。

        しかし、最高裁は、
        「『月間総労働時間が140時間を超え180時間に満たない場合、月額41万円』という契約内容では、通常の賃金と時間外の割増賃金との区別ができないから、時間外の割増賃金が基本給に含まれているとはいえない。
        労働者から賃金債権の放棄がされた具体的な意思表示もないし、月によって日数が異なるからそもそも放棄する対象も定まっておらず、放棄したとはいえない。」と判断しました。

        創栄コンサルタント事件(大阪高判平成14年11月26日労判849・157)では、年俸制と割増賃金について争いになりました。
        「年俸制を採用することによって、直ちに時間外割増賃金を当然支払わなくてもよいということにはならない。
        仮に基本給に時間外割増賃金を含む合意があったとしても、割増賃金部分が法定の額を下回っているか後で具体的に計算して確認できない賃金の支払方法だから、合意自体が37条違反として無効である。」としたものです。

        今回の判例は、この創栄コンサルタント事件と同様の趣旨の判決が最高裁で出されたといえると思います。

        経営者としては、法定労働時間を念頭に、予め雇用契約書上、曖昧な賃金支払方法の記載を避けましょう。
        裁判にかける費用と時間を考えたら、法律を潜脱したとみられかねない規定を設けるリスクは高いと思います。
        判例 | 14:47 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |